舛本 博史(放射線治療部長)
放射線治療の歴史は古く、1985年のレントゲンによるX線発見の翌年にはX線を用いた治療が試みられています。放射線治療は外科治療、化学治療と並ぶがん治療の三本柱の1つですが、完全治癒を目指す根治治療から症状緩和を目的とした緩和治療まで、がんの進行状況や患者さんの全身状態などに応じて幅広く応用されています。外科治療と同様にがん局所に対する治療ですが、手術と大きく異なるのは臓器の働きや形を保った治療である点です。現在の臨床医学では生活の質を重視した治療が要求される様になってきており、侵襲の少ないいわゆる「切らずに治す治療」である放射線治療の重要性はますます高まってきています。欧米に比較しわが国では放射線と聞くと怖がる方がまだ多く見受けられますが、近年の放射線治療技術の進歩はめざましく、安全かつ正確な治療が可能となってきています。
外部照射:放射線治療は、リニアック(X線および電子線を発生させる放射線治療装置)を用い体の外から放射線を照射する治療法が主体です。これを外部照射といいほとんどのがん(一部良性疾患を含む)が治療の対象となります。様々な進行度に合わせた治療が可能ですが、治療目的に応じ手術や化学療法と組み合わせて治療する場合も多く、各診療科と綿密な打ち合わせの後治療法を決定します。
平成23年に外部照射を行った患者実人数は269人でした。そのうち新規患者数は238人でした。原発巣別内訳では、造血器・リンパ系腫瘍が28%と最も多く、次いで耳鼻咽喉科・頭頚部外科肺腫瘍、乳腺腫瘍の順でした。最近では、頭頚部腫瘍および婦人科悪性腫瘍の症例が増加してきています。
通常の放射線治療は、がん局所の治療になりますが特殊な治療法として全身照射という治療があります。これは造血幹細胞移植の前に全身に放射線を照射する方法です。当院血液内科では造血幹細胞移植を積極的に行っているため毎年多数全身照射を施行しており、平成23年は48人に施行しました。

小線源治療:平成17年8月から、前立腺がんに対しヨウ素125小線源永久挿入療法を開始しました。これは、放射性同位元素の一種であるヨード125を小さな粒状の容器に密封したもの(小線源といいます)を前立腺に直接埋め込み、そこから出てくる放射線を利用して行うがんの治療法ですが、放射線科と泌尿器科が協力しておこなっています。主に低リスクの前立腺がん症例を対象として治療を開始しましたが、現在は高リスク症例にも積極的に施行しています。放射線の集中性に優れた治療法であり、平成22年までに219人、平成23年は16人に治療を行っています。摘出手術に比べてより侵襲が少なく、かつ同等の治療効果が期待できる優れた治療法であり短期の入院により治療可能です(当院泌尿器科ホームページも参照して下さい)。
アイソトープ治療:アイソトープ治療とは、放射性同位元素を体内に投与しておこなう治療法のことをいいます。当院では平成20年4月から転移性骨腫瘍の一部に対しストロンチウム-89を用いたアイソトープ治療を開始しました。ストロンチウム-89は骨に転移したがんに集まりやすい性質があります。骨にがんが転移すると多くの場合強い疼痛を訴えますが、ストロンチウム-89から出てくる放射線には疼痛を緩和させる強い効果があります。まだ新しく始めた治療法ですが平成22年に3例、平成23年は3例に施行しました。