肝がん

はじめに

 肝がんでお亡くなりになる方は、現在年間3万人を越え、がん死亡数では男性で第3位、女性で第5位です。 肝がんの多くは慢性肝炎や肝硬変という病気を背景に起こってきます。

肝がんとは

 肝がんの中には、肝臓の中の肝細胞ががんになってしまう肝細胞がん、肝内の胆管ががんになってしまう胆管細胞がん、またそれらが混じっているものなどいろいろな種類があります。日本では肝がんと言うとほとんどが肝細胞がんのことをいいます。これからはこの肝細胞がんについてご説明していきます。日本の肝細胞がんの患者さんの約90%にB型肝炎ウイルスやC型肝炎ウイルスの感染が認められています。これらのウイルスが肝臓に感染したことによって肝細胞がんが発生すると考えられていますが、その他の肝細胞がんの原因としては、アルコール性の肝硬変や自己免疫性の肝炎や胆汁性肝硬変の患者さんなどに稀に肝細胞がんが起こることがあります。

主な検査

1) 血液検査

 血液の中のB型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルスの有無、肝障害の状態、腫瘍マーカー(がんがあると血液の中で数値が上昇し、がんの有無の指標となります。)を調べます。代表的な腫瘍マーカーとして、AFP(アルファーフェトプロテイン)とPIVKAⅡ(ピブカ ツー)があります。

2) 超音波検査

 超音波診断装置を使って肝臓の中を見る検査です。苦痛もなく簡単に検査できますので、肝細胞がんを見つけるには大変有用な検査です。

3) CT

 エックス線を使って肝臓の中を見る検査です。超音波で検査しにくいところも見ることができます。病変をくわしく見るために造影剤を注射します。

4) MRI

 磁場を使って撮影する検査です。MRIでも造影剤を用いることがあります。最近では肝細胞がんが明瞭にうつる新しい造影剤も使われています。

5) 生検検査

 どうしても診断がつかない場合は、超音波で見ながら肝臓の腫瘤に細い針を刺して、細胞を採取して、がんかどうか診断することがあります。短期間の入院が必要です。

治療

内科的治療、外科的治療があります。
 どちらを選ぶかはがんの数と大きさ、肝機能、併存疾患の有無を見て判断します。最初は内科的治療をしていても、経過によっては外科的に切除することもありますし、その逆もあります。

1) ラジオ波焼灼療法

 ラジオ波を利用してがんを焼く方法です。超音波診断装置を使用して肝細胞がんに細電極針を刺してがんを焼きます。多くの場合局所麻酔でお腹を開けずに行いますが、場合によっては全身麻酔でお腹を開けたり、腹腔鏡を使用したりして焼くこともあります。

2) 肝動脈塞栓術

 足の付け根の動脈から肝細胞がんに行く動脈にカテーテルという細い管を挿入し造影剤を入れて、肝臓の血管を確認します。がんに行く血管に抗がん剤を入れ、さらにジェルパートとういう薬を使ってがんに行く血管を詰めて、がんに血液が行かないようにするいわゆる“兵糧責め”の治療を行います。

3) リザーバー留置による抗癌剤動注化学療法

 がんに行く血管にカテーテルという管を入れて体の中に留置する方法です。目的の血管に抗がん剤注入が簡単に持続的に行えます。

当院における肝細胞がん治療の選択

 基本的には、肝がん治療のガイドラインに基づき肝臓の予備能力とがん進展度に応じて、肝臓科、放射線科、外科の合同カンファレンスで決定治療法を選択しています。

 基本的には下記を原則としています。

1) 開腹肝切除術

肝臓の予備能良好な径20mm以上の単発肝細胞がんは手術を第一選択にしています。
多発肝細胞がんでも切除可能であれば手術を考慮しています。

2) ラジオ波焼灼療法(体外、腹腔鏡、開腹)

正常肝、慢性肝炎の場合
 腫瘍径20mm以下
 腫瘍径20mm以上30mm以下で手術困難な例または手術を望まれない例
肝硬変
 腫瘍径30mm以下、3個以下

3) 肝動脈塞栓術

多発する肝細胞がん
 単発であっても切除困難で腫瘍径30mm以上
 (症例によりラジオ波焼灼療法も併用しています)

4) リザーバー留置による抗癌剤動注化学療法

肝動脈塞栓術の効果不十分な多発肝細胞がん


 肝臓の予備能力がとても低下していて上記の治療が困難な例では、九州大学と連携して、肝臓移植も検討します。

 C型肝炎ウイルス陽性で肝細胞がんが完全に治療できた例では、十分に検討のうえ、積極的にインターフェロンによる抗ウイルス療法を施行しています。

肝細胞がんの予防療法

 C型肝炎ウイルスに感染している場合、インターフェロン療法でウイルスを消す、あるいは肝機能を安定化させ、肝がんが出来にくくする必要があります。また、肝庇護剤(強力ネオミノファーゲンC、ウルソ、小柴胡湯)などで肝機能の値をコントロールすることで発がんを抑制できます。たとえ肝細胞がんができたとしても、早く見つけて早く治療しておけば、治療の選択の幅も大きく、長期生存を期待できます。B型慢性肝炎、C型慢性肝炎の方は決して放置することなく、定期的な検査で肝がんの早期発見につとめる必要があります。

診療実績

平成22年度 腹部超音波検査 4,329件
  肝生検 58件
  経皮的ラジオ波焼灼療法 42件
  肝動脈塞栓術 67件
  肝動注化学療法 14件
  内視鏡的食道静脈瘤結紮術 30件
  肝腫瘍のドレナージ 6件
  C型慢性肝炎に対するインターフェロン療法 32件

累積生存率
stage別生存率
生存率1
生存率2
生存率3

担当医師

肝臓科 部長 高橋 和弘
  医長 具嶋 敏文
  医長 上野 新子
副院長   一宮 仁
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